2011/12/03

本質

 いろんな人が色々なことをやっています。その中には似て非なるものが結構あります。似て非なるものの「非なること」がわかるかどうかということは実は考えなくても最初から明らかなことです。何がどうだからとかこれがこうなったからではなく、最初からこうであることはこうであるのです。


 中原中也の詩でいえば骨です。骨は状況がどうであろうと何も変わらないのです。変わるのは状況に影響される人だけです。


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詩人と住民ディレクター


 中原中也の詩について小林秀雄が書いている文章が全編見事と感じます。久しぶりに読んでみての感想です。少しだけ引用すると・・


 彼の詩は、彼の生活に密着していた、痛ましい程。・・言わば人生に衝突する様に、詩にも衝突した詩人であった。・・心理映像の複雑な組み合わせや、色の強い形容詞や、個性的な感覚的な言葉の巧みな使用や、補い難いものに狙いをつけようとする努力や、等々、そんなものを捨ててしまってやっぱり骨があった様に歌が残ったという様な詩である。

 
 この後半はテレビのお飾りの箱を捨ててごぼっと大地から抜いて泥のついた大根をどさっと投げ出す様な住民ディレクターの表現と共通するものを強く感じます。詩人の「骨」は住民ディレクターでは「大地の土」でしょうか。小林秀雄さんの批評の真髄は「他者の作品を借りて己を懐疑的に語る」こととご本人がおっしゃっています。


 一方で詩人は自らの身体の奥深くから歌うのです。住民ディレクターはやはり自らの身体深くから映し出すのですが共通するのは「生活」です。生活を歌う詩人、生活を映し出す住民ディレクター。歌うように生活を映し出せれば素晴らしいですね。

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2011/07/05

歩く

 歩きはじめた。どうしても田舎にいる時は車が多く、都会に行けば歩くというパターンがある。この日曜日に「獅子入れ」があったのでかなり歩いた。歩いて発見した村の光景があまりにも豊かで今まで会えなかった村人との出会いも相当あった。顔は知っていてもご自宅がわかるとぐっと近しくなる。奥さん、旦那さん、子どもたち、じいさんばあさん、犬まで一人一人のお宅を訪ねてその方の環境が見えてくると素顔がわかる。山々の裾野に咲く花や流れる川も身体感覚が研ぎすまされるように近づいてくる。

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2011/06/09

自然と身体

 ずっと長い間夜型で生きてきました。恐らく高校3年生の頃からでしょう。一応ぎりぎりになったところで受験勉強をやらねばという気はあっても実際は勉強が手につかないままただ起きてるようなものでした。その癖が大学時代を経て今まで続いてきたわけです。
 
 最近深夜があまり効率がよくなくなってきました。年齢のせい?かもしれませんが、それにもその理由があります。朝早くから目覚め、ゆっくりと朝風呂に入り、湧水でできたごはんと味噌汁をいただき、おもむろにデスクに座る。川のせせらぎ、珍しい鳥の鳴き声、虫の声、この時間になると車も通りますが自然音に満ちています。


 自然と共に目覚め自然の生命と共に身体が起き出していく感覚があります。自分の生命が豊かに自然に反応している感覚が内面から感じられます。夜はしずかに眠りにつきすやすやと眠り、朝を告げる鳥達の声、川の音が目覚まし時計にはとても及ばないやさしい目覚めを教えてくれます。


 パソコンのキーを叩いていても・・、そう今カエルが合唱をはじめました。大自然の交響楽が毎日豊かに生きるスタートを切らせてくれます。





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2011/05/20

 娘が二人います。ある時長女がこんな話をしました。


 社会に出てから仕事ができることを楽しみにしていた。最初の勤務地は鹿児島で転勤や異動で名古屋などへも行き、いろんな職場の人との出会いはあったが不思議なことがひとつずっとあった。誰一人楽しく働いていないことだった、と。
 
 幼い頃から父母を見ていて仕事は楽しくするものと思い込んでいたらしい。それほど父母は二人とも仕事のときも活き活きしていた記憶しかなかったらしい。この話を聞いて逆になるほど、と考えた。確かに自分自身がいろんな職場やテレビ局というサラリーマンも経験して楽しく生きている人はまずいなかった。だからというわけではないがいつも楽しく仕事をする延長線に起業があり、今につながる。


 今も難題は次から次へと来るがそれを解決する事自体が面白い。解決すると大きく未来が開かれるからだ。花という名前は産まれる前から決まっていた名前でそれ以外には全く考えが及ばなかった。本人も結構気に入っているとおもわれる。


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2011/05/06

東電、水俣の緒方さん

 東電への抗議集会の記事を読んで水俣を思い起こしました。そして緒方正人さん。
 わたしは熊本の民放でテレビ局の報道制作現場を14年間経験しましたが緒方さんは最も印象深い人の一人です。緒方さんは長い間水俣病の患者団体のリーダーでした。常に先頭に立っていました。しかし突如患者団体から抜けてしまいました。あるとき地元新聞に緒方さんの記事を見つけ理解しました。
 
 手記のような記事でしたがある夜、緒方さんはいきなりテレビを庭先に投げつけ壊してしまったというような意味の記事でした。患者運動の先頭に立っていた緒方さんは県や国に抗議に出かけると官僚や役人の非人間的な対応に遂には怒り心頭になり机を叩いて大声を出してしまいます。それは交渉の中のひとつの現実です。
 
 しかしテレビニュースを見ていると何度も何度も自分のその姿が繰り返し放送されます。見ている視聴者にしては緒方正人は危険人物、恐い人という印象がどうしても拡大します。そのことだけではなくテレビが流す「水俣」のイメージがいかに現実の時間、空間とかけ離れてある部分だけを集中的に流し誤解を与えているかに気づきます。わたしはこの時テレビ局員でしたからこの話はとてもインパクトがありました。
 
 送り出す側にいた人間として深く考えるべき「事件」です。その後緒方さんは「チッソ(水俣)はわたしだった」という衝撃的な本を出されます。そして患者運動から退き一線を離れます。このタイトルの響きは今まさに全国民に問われていることと感じます。わたしは当時、ドキュメンタリーを制作する側のテレビ局にいながらもいつも水俣病交渉で黙って下を向いている公務員の側にもし自分がいたらこの緒方さんの抗議にどう答えられるか、を考えていました。
 
 取材する側からだけではなく、される側、批判される側からの視点。庭に投げ出されたテレビによってすでにテレビ局は緒方さんから批判されていました。が、彼は自らを「チッソだった」と理解した時点から水俣病患者という一人の人間を超えて人類という地平に立たれたのではないかと感じました。大震災によって「水俣」が終わってないことを感じ、緒方さんを思い出します。


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2011/03/14

全く新しい局面、今。

 3/11日の午後3時頃、今東峰村の我がプリズム事務所に同居している27歳の高橋弘展くんが「東北でとんでもない地震が起きてるようです」、とi-phoneをみてつぶやいた。


 一瞬、感じた不安はテレビ画面をみるうちに一気に膨れ上がりました。巨大津波があっという間に海岸沿いの地域を吞み込んでいく様を映し出しています。これは1地域の局地的な災害をはるかに越えて日本列島全体の危機的状況が来ていると直観しました。実は翌日は東峰村が取り組む住民メディアの実態を視察に来るツアーが予定されていました。たまたま高橋君所属の起業家のお仲間がやってくる予定でした。


 東北の三陸海岸と福岡県の山中、見ようによっては最も離れて遠くの地域同士のことです。どう考えても災害が波及することはあり得ません。しかしわたしは確実にこの現象は我々が住むこの東峰村だけでもなくあらゆる地域に共通する事態が起こっていると感じていました。あれから3日立ちました。あの瞬間に感じたわたしの直観は間違いなかったと今あらためて感じます。


 この途方もない状況になってしまったあの大津波の結果は全面的に日本国の問題、課題です。あの時、はじまったのです。全く新しい危機的状況、困難な時代がはじまってしまったのです。マスコミが伝える災害報道とかでは捉えきれない日本の全く新たな局面、どうするか、は、わたしたち一人一人が問われています。





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